
天の祝福と運命の出逢い
ふっふっふっふっふ
はーはっはっはっは

見よ、この青い空、広い海!
現実には富士山から広い海を眺めるのはチト無理な話であるのだが、山の上でこれだけ青空が広がっていることなど、下界で大雨に悩まされている人たちに想像もできまい。
「麓は雨だから山も雨」なんていったい誰が決めた常識であろうか?
自慢じゃないが私は、仏様の加護を得るためにお寺で厳しい精神修行を積んだほど徳の深い人間である。
実際にはお寺で修行するのはこの後の話になるのだが、そんなツッコミ抜きにして、それだけ心の清らかな人間が嵐を恐れることなく自分の誕生日を祝うため
純粋に、ひたむきにご来光を目指す姿を見たのであれば、神様だって私の願いをかなえてあげようという気持ちを持つであろう。
実際のところ、麓が雨なのに山では晴れ、ということは珍しい話ではないかもしれない。
途中出会った荷物運びの兄ちゃんと話す機会があった。
彼は昔、台風の日に富士山へ登ったことがあるらしい。当然のことだが麓のほうはそれは酷い天気だったが、山の上は不思議と穏やかできれいな青空が広がっていたという。
嵐とか台風とか、そんなフツーの感覚の持ち主なら山登りを躊躇してしまうときほど、山の上で普段見られないような青空に出会ったという話は他にも聞く。
そうあるべきではないかと私も思う。
いつも安全第一、危ない橋を渡らない常識的な感覚の持ち主が得をするのであれば、世の中はなんと味気なく、つまらないものとなってしまうだろうか。
時としてあえて無謀な挑戦をすることにより、ふだん得られないような体験、人によって「奇跡」と表現されるような体験、をチョットだけ味わうことができるからこそ、人生というものは面白いものなのではないかと、私は思う。
それはさておきここで質問です。あなたは旅に出るときどのような出来事を期待しますか?
私の答えは「見知らぬ人との出会い」です。
旅は人を開放的にさせる。そのため、旅先で見知らぬ人と出会っても「やぁ」と気さくに話をかけることも容易であるし、そのまま親しくもなりやすい。
特に一人旅であればなおさらだ。団体行動など考える必要もないため気ままな行動をとりやすいからである。
この上、一人旅の女性を出会い交流を深めることができればいうことなしなのであるが、さすがにそんなシチュエーションに出会えるはずが...
ありました\(*^○^*)/
ホントに女の子だよ。しかも一人旅だよ! しかもけっこうタイプ。
こんなか弱い女性をひとりで厳しい山登りをさせるわけにはいかない。助けるべき者を助けなければ男がすたるというものであろう。
スケベな男であれば、これが縁で男女の関係に...などと妄想を膨らますかもしれないが、日本男児は紳士たれと教育されてきたオレの中にそのような概念など存在しない。
あるとすれば「予約していた山小屋にどうやって連れこもう」という心配だけである。
紳士たるもの、道行く女性にチャラチャラ声をかける行為は慎むべきであろうが、心に芽生えた正義感が私を行動に移した。
「へーい姉ちゃん、一人旅〜?」
決してナンパと間違われないよう極力紳士的な口調で話しかける。
「え、そ、そうですが...(かなり警戒している口ぶり)」
「ノーノー、ワタシ、怪しくない。ところでさー君、これからどこへ行くの?」
「どこへ、て頂上へですが...」
「奇遇だねぇ(←当たり前だろ)、僕もそうなんだ。ねぇ、せっかくだから一緒に行かない?」
「...(かなりイヤそう)」
「この先どんな危険が潜んでいるか分からないんだ。そんな中女の子が一人旅なんて危ないよ。さ、さ、さ、それじゃ僕がキミを頂上までエスコートしてあげる」
一方的に話をまとめにかかるオレ。
彼女にしてみればおそらくタチの悪いストーカーに絡まれた気分であったことだろう。しかしこの先、オレがいかに頼りがいがあって優しくて、彼女にとってふさわしい男であるかをアピールするためには、どう思われようがここで彼女を繋ぎとめておかなければならないのである。
オレたちを待つ登山道は舗装された道ばかりではない。
大股でなければ登れないような階段もあるし、それこそ岩肌につかまりロッククライミングをせざるを得ない場所もある。
果たして、私と一緒に旅することにあった通りすがりの清純系女性は、自分の手のひらよりも大きな岩を前にして苦戦している様子。
ほれみろ、さっそくオレの力が必要ではないか?
「さ、僕につかまって」
優しく手を差し伸べようとしたそのとき
「あの、私に構わず先行ってください」
え、あれ?
「馬鹿なことを言うな、キミを置いて一人で行けるわけないじゃないか! てゆーか僕をひとりにしないで」
「私、ひとりで登りたいんです。貴方にはついて行けません。サヨナラ」
ガ ー ー ー ー ー ー (゜Д゜) ー ー ー ー ー ー ン
フラれました(ToT)
こうして、「旅先で運命の出会い、そのまま男女の関係にムフフ...」という私の夢は、彼女と出会ってからわずか五分で幻と消えたのだった(泣)。
やっぱり私のような硬派な男は、女を侍らせながらチャラチャラ旅するよりも、ひたすらクールに一人旅を続けるのが性にあっているというらしい。
こうして再びひとりになった私は、この先に待つ運命などなにも知らないまま、クールな男を演じるため失恋の涙をこらえながら頂上を目指していた。
