仁義なき戦い
暴走バスvsインド人警官




あたらしい朝がきた 希望の朝だ
ここが日本であればこんな歌も歌えることであろう。しかし、残念ながらここは日本ではなくインドである。
むしろ希望の朝を迎えているのは

「また日本人のカモが来たぜ」ノ(゚Д゚)ノウヒャヒャ

とほくそ笑んでいるインチキインド商人のほうであろう。

今さらながらにして思う。どうしてこんな国なんかに来てしまったんだろう。
あぁ、いっそ何もせずこのまま日本へ帰りたい...



は、いったい何を考えているのだオレは?
せっかく高いカネと時間を費やしてやってきたというのに、何も楽しまないで帰るなんてあまりにもったいなくはないか?
考えてみればインド人だって僕らと同じ地球に住む仲間じゃないか。だったらインドだって日本と同じ、ふつうの国であってもおかしくないのではないか?
みんなインド人のことを悪くいうけど、同じ地球に住む仲間が悪いヤツだなんてオレには思えない。そんなこと信じたくない。


気を取り直したオレは、暴走バスの車窓からインドの町並みを眺めていた。
そしてそこで見た光景は、やっぱりインドと日本は同じなんだという自分の考えが正しいものであると確信させるに十分なものであった。





街では若い男女が自転車を二人乗りしながら楽しげに走っている。
笑顔で彼らに手を振ってみる。すると、男のほうがにっこりと微笑みを返してくれた。
互いの愛を確認しながら青春を謳歌する若いカップル。日本でも見られる光景ではないか?
日本と違うところといえば、彼らの肌が浅黒いことと女性の服が黄色いサリーであるくらいであろう。




バスはやがて街の中心へと向かう。
そこは人や車の群れでごったがえしており、喧騒が絶えることなく耳に入ってくる。
これも日本の都会でよく見られる光景であろう。
日本と違うところといえば、人力車が走っていることや、明らかに制限オーバーの人間を荷台に乗せたジープが走っていることや、道路の真ん中で牛が昼寝をしていることくらいである。







...ん? ??




寝不足なのかな、幻が見えるようだ。
目をこすってもう一度外を見直す。


道路で寝そべる牛



牛、牛〜〜〜〜〜!!



説明しよう。インドの国民は大部分がヒンズー教徒である。そして、ヒンズー教は牛を神様の化身として信奉している。
そのため、インドの街中ではノラ牛が大手を振ってうろついており、時には道路の真ん中で昼寝をして車の往来を止めてしまうこともあるそうだ。噂では聞いていたがホントにあるとは。


しかし、それならば牛はともかく、ヒンズー教とは何の関係もないはずのノラ犬やラクダまでもが大手を振って街中を歩いている理由がさっぱり理解できないのであるが、それはツッコんではいけない質問であるのかもしれない...





いつしかバスは目的地であるジャイプルへ向けて高速道路を走っていた。
ふと気づくと、後ろからパトカーがサイレンを鳴らして近づいてきた。
パトカーはオレたちの乗っているバスを止めて運転手を呼び出した。彼らの話に耳を傾けてみる。

「そこのバス、スピード違反だ、罰金を払いなさい」
「ふざけるな、オレはスピードなんか出しちゃいない。何をいってるんだ!?」


小遣い稼ぎのためスピード違反を見つけては取り締まりを行う警官と、それを否定する運転手。日本でもおなじみの光景だろう。
が、インド人警官はここからが違った。

「ウソをつくな、確かに10キロオーバーしただろう。罰金を払えないのならワイロをよこせ!



あーそっか、ワイロはらえば許してもらえるのか...て




ワ、ワ、ワ、ワイロ〜〜〜!?(゚Д゚;)





市民の平和と安全を守るはずの警察官が、善良な市民を捕まえてワイロを要求するとは!
こんな暴挙、日本ではとうてい許されるはずもない。いや、インドでもタダでは済まされないであろう。
いくら見逃してくれるといってもこんな不正を許すわけにはいかない。すぐに警視庁に通報しなければ。
な、そうだろう運転手さん。



「へいへいおまわりさん、じゃあこれで」

「ふふふインド屋、お主もワルよのう」

「おまわりさんこそ、へへへ」



...払っちゃった。


ガイドのシャーラットさんに聞いた話によると、インドでも最近道路交通法が厳しくなりスピード違反の罰金が跳ね上がったらしい。
また、インドでは日本と異なりスピード違反で捕まったらその場で罰金を払うシステムになっている。日本のように後日振込みということはできない。
ただ、インド人の警官はスピード違反で罰金を払わせてもそのお金が自分の懐に入ることはないようである。
そのためインドでは、こうした警察官のワイロ要求が後を絶たないという。
まったく信じられない話である。日ごろ能なし呼ばわりしていた日本の警官が、とてつもなく優秀な人たちに思えてきた。

ヒンズーの神様教えてください。この国では警官が私腹を肥やすために無実の民を苦しめております。
こんな横暴が許されてよろしいのでしょうか(T_T)














どうだ、これで

インドという国が日本と同じトコなんだということが、よく分かっただろう(泣)


しかし、こんなインド警官ですらその後出会うインド人の数々に比べたら、開始早々あっさりと殺られたスターウォーズIIIのデュークー伯爵並なチョイ役に過ぎないことを、このときのオレは分かっていないのであった。





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