バトルvsインド人

in アーグラー









「そこをどけー!!」





どうしてインドではこう、街へ出るたび叫び声をあげなくてはならないのだろうか?



街へ出てから数歩も歩かぬうちに、私はインド商人Aにつかまってしまった。

インド商人A「おみやげ、買ってく。みっつで千円」
私「ノーサンキュー」
「五つで千円」
「ノー!」
「全部で千円」

「さっきからいらねーっていってんだろ、言葉通じてんのかこのヤロー!!」



インド商人Aを振り切ってから間もなく、今度はインド商人Bにつかまってしまった。
インド商人B「これ、おみやげ。二本で千円」
「へっ、そんなガラクタに千円はらうんだったら、日本でさおだけ屋のさおを買ったほうがマシだね」



インド商人Bを振り切ってから間もなく、今度はインド商人Cに(略)。
インド商人C「ヘイジャパニー、おみやげ買ってけー」
「......」


逃げても逃げても新しいインド商人が次々にやってくる(T_T) その出現率の高さはおうごんのツメを手にしたときのモンスターとのエンカウント率といい勝負である。
こうしたやりとりを50℃近くの炎天下で行っているのだから、よけいに疲れがたまる。



ここでインド商人たちの行動パターンを分析してみた。

インド商人の行動パターン
1.やけに馴れ馴れしく近づいてきて物を売りつけようとする
2.こちらがいらないといってるのに勝手に商売をはじめる。しかしその値段は通常に比べるとべらぼうに高い。
3.こちらがノーといってるとどんどん値段が下がってくる。しかし、それでもふつうに比べたら十分高い。



はて、どこかでこんな商人見かけたような? たしかドラ○エの世界で...





アッサラームのボッタクリ商人。
この直後、とんでもない値段をふっかけてくる。

私は
アッサラームの町のボッタクリ商人は、絶対インド商人がモデルである

と確信した。





バスでアーグラーへ向かう途中のできごとである。ひとりの猿使いが目についた。
猿使いもこちらに気づいたのか、近づいてきて大道芸を始める。
猿使いの柔和な笑顔、おどけた猿の仕草。それらはインド商人たちのやりとりで荒んでいた私の心を和ますのに十分であった。
考えてみればインド人に心を和まされたのはこれが初めてかもしれない。



旅の思い出にと写真を撮ろうとしたそのとき、遠くからシャーラットさんの声が聞こえてきた。

「写真を撮るとお金を取られてしまいます。気をつけてくだ...」





カシャリ ←シャッターの音

旅先で出会った猿使い。
この直後、猛烈な勢いで迫ってくる。



...

あー、撮っちゃった。
シャーラットさん、アドバイス遅いよ。



案の定、さっきまで人懐っこい笑顔を浮かべていた猿使いの顔が一転して、いつも見慣れたインド商人の顔に変わっていた。


「ヘイそこの日本人、写真撮っただろう。金はらえ!」
「いや、撮ってない、ただカメラを向けただけだ!」
「ウソをつくな、はやく金をだせ!」
「はぁ? なんでオマエに金はらう必要があるのだボケ!」
「ふざけんな、人の芸見たくせにタダですむと思ってるのか! ガタガタ言わずにさっさと見物料はらえこのくされ日本人が!!」
「そんな三流大道芸に金をはらうヤツ、日本にはひとりもいないわ。そんなに金が欲しけりゃもっとマシな芸を見せろやこのインチキインド人が!!」




その後もヤツとのやりとりは続いたが、何とかカネをはらうことなく逃げ切ることができた。
インドではインド人が常に旅行客のカネをねらっているということを、絶対に忘れてはいけない。




そんな傍若無人のインド商人であるが、彼らの手が届かないところがひとつだけある。それは観光地の中である。
入場料がかかるためか、さしものインド商人たちも観光地の中にまで乗りこんできて商売を始めようとはしない。そのため、いったん観光地に入ってしまえばインド商人に煩わされることなく心休まるひとときを過ごすことができる。
実のところ、旅の後半ではインドの歴史に触れられることより、インド商人から逃れられることのほうが、観光地を訪れる喜びとして大きくなっていたりした...




そんなこんなを繰り返しながらも、私たちはあの有名なタージ・マハルに到着した。




あぁタージ・マハル。
17世紀前半、ムガール帝国皇帝シャー・ジャハーンが、愛妃ムムターズ・マハルの「わたしが死んだら世界で一番美しい愛の記念碑を作ってほしい」という遺言を守るため、22年の歳月をかけて完成した世界一美しい墓。
ムガール帝国とかシャー・ジャハーンとか、よく分からないけど。





そんな400年前のロマンスを今に伝える世界遺産にうっとりしていたそのとき


「ヘイ、ジャパニー」



うん? どこかで聞いたフレーズだな。イヤな予感がする。
恐るおそる声のした方向を振り返ると


















インド商人キターーー(つД`)・゚・






なぜだ? なぜオマエがここにいる!? インド商人は観光地の中にはあらわれないはずじゃなかったのか!?


インド商人は手にしたカメラを私に向けてきた。おい、コラ、何をする? オレは写真を撮られるのが好きじゃないんだ。勝手に人の写真を撮るんじゃない!
なに、写真撮ってやったからカネはらえ!?



 


ヌガーーー、いい加減にしろインド商人!
写真を撮っても金。写真を撮られても金。
なにをやってもカネ、カネ、金。しまいには息をしているだけでも金を取られそうである。


もっとも、そんなインド商人とも明日でお別れである。明日はいよいよ帰国の日。
はたして無事に、インド人たちの魔の手から逃れることができるのか?







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