異国の土地で裸の付き合い



オレは乗馬をリタイアした。

オレはこの乗馬トレッキングに、絶対リタイアはしないという意気込みで参加していた。例え途中で力尽き、モンゴルの草原に骸を晒すことになったとしても、決してギブアップ はしないと心に決めてきた。
それにも関わらず、オレは乗馬をリタイアした。雨が強すぎたという理由があるとはいえ、自分の決意に反したこうした行為に、 後ろめたい気持ちがなかったわけでもない...






などということは全く思っておらず、オレはキャンプ場の温泉を満喫していた。
いやー、やっぱり温泉は楽しいなぁ。



オレがいま楽しんでいる「ツェンケル温泉」という温泉は、欝蒼とした樹々に囲まれた、「隠し湯」という形容がピッタリくる温泉である。
このような場所で温泉に身体を浸していると、雄大な自然と一体化してくるような気がして、乗馬の疲れが癒えてくる。


こんな自然あふれる露天風呂で入浴シーンを撮影してもらえたら、さぞかしいい写真集ができ上がることだろう。
色っぽく見せるため一時間かけてセクシーポーズを考えたのだが、写真を撮ってくれる人が誰もいなかったため実現には至らなかったのが残念でならない。





温泉の中はこんな感じである。周りを囲うような柵などは存在しない。そのため、入浴している人はモンゴルの大自然を間近で楽しむことができる。
同時に、モンゴル人の開放的な気質を現しているのだろうか、通行人が近くを往来することも自由である。

そのため、入浴シーンが道往く人に丸見えだったりする。
露出狂にはたまらないシチュエーションだろう。




そして、これもモンゴル人の開放的な気質を現しているのだろうか、つい立ての向こうから、



女子風呂が見えたりする。

覗き好きにもたまらないシチュエーションだろう。





風呂あがりの帰り道、ビルグーンと会った。
「あら、しゅんさんじゃないですか?」
「こんばんはビルグーン、お散歩かい?」
「いえ、さっきまで温泉に入ってたんですわ。しゅんさんは?」




えー、さっきまで温泉に入ってただってー?(゚Д゚;)


ということは、あのつい立ての向こう→
に彼女がいたことになる。
はじめて知ったぞそんなことー!

こんなトコに入ってるやつなんて誰もいないと思って早々に 覗き 取材を切り上げたが、そうだと知っていたら今ごろは...くそー、できることなら今一度、あの瞬間に戻してくれー!
オレの頭にはモー娘。の「直感2〜逃した魚は大きいぞ!〜」のフレーズが流れていた。




もっとも、上記写真を掲載するため全裸姿で女子風呂を盗撮していたオレの姿は、はっきりいって変質者そのものである。
こんな姿を誰かに見られていたら、いかに開放的なモンゴルの国であっても即タイホであろう。
そして、国辱をさらした日本人として日夜マスコミやメディアから叩かれ続け、日本大使館からも特に身柄の返還を求められることのないまま、モンゴルの獄中で寂しく一生を終えていたかもしれない。
そう考えると今回の結果は、もしかしたらこれで良かったのであろうか。





「あの、中はいってもよろしいですか?」
ゲルの外からビルグーンの声がした。
「うん、どうしたんだい?」
「あの、お話があるんですけど...」

いったい何の話というのだろうか。さっきの覗きの詰問か?


彼女はおずおずしながら中に入ってきた。
「しゅんさん、あの、あの...」
ビルグーンはひどく恥ずかしそうだった。次の言葉をいうのに気持ちを落ち着かせているのがオレにも分かる。


この展開、もしかして、もしかして??
オレは期待と緊張に身を強ばらせながら次のセリフを待った。





「あの、しゅんさん...
お腹の薬持ってないですか?








ガックーーーン、この展開でそのオチですか。
オレの心のときめきを返せー!!(号泣)




ビルグーンから話を聞いたのか、この後もモンゴル人たちが大挙して、オレのところへ薬を求めにやってきた。
これだけは言っておく。

オレは薬屋じゃねー!!





薬のお礼というわけか、オレはプーチーさんのゲルに招待された。
「アナタ、私たちの友人ね。歓迎します」
おおらかで気さくなモンゴル人であるプーチーさんたちと意気投合。互いの身の上話に花が咲いた。

「しゅんさんは今いくつですか?」
「28です(ヤベー、自分の年ばらしちゃった)」
「しゅんさんは結婚してるんですか?」
「あ、いえ」
「しゅんさんは彼女がいるんですか?」
「あ、いえ(号泣)」
「それはよくないです。モンゴルの人たち、28ではみんな結婚してます。アナタ、モンゴルの感覚だと生き遅れてます」
「はい、日本の感覚でも生き遅れてます。
て...
それは日本でもさんざん言われてることなんだ。なんでモンゴル来てまで日本と同じ説教されなくちゃいけないんだ!
たのむ、オレに日本の現実を思い出させないでくれー!!」





「おや、気を悪くしてしまったようですね。まぁ、これをどうぞ」
そういってプーチーさんは一本の瓶を取り出した。



「あの、これ...」
「モンゴルウォッカです。私たち、これ、生で飲みます」
「『生で飲みます』って...日本ではウォッカって、水で割って飲むものなんですけど」
「大丈夫です。モンゴルのウォッカ、アルコールが少ないです。
ふつうのウォッカ、アルコール40%、モンゴルウォッカ、アルコール37%」
「3%しか変わってないじゃんか! そんなの弱くなったと言えるかゴルァ!!」

なおも抗議を続けるオレを無視して、コップ一杯になみなみとついでくるプーチーさんたち。
ひぇ〜、誰か助けて。






一時間後、四人の屈強なモンゴル人(プラス一人の軟弱な日本人)の手によって
モンゴルウォッカ、みごとに





乾 杯!


おそるべしモンゴル人。