お馬は行くよ どこまでも



苦しかった乗馬旅行、いろいろあった乗馬旅行。
しかし、その乗馬旅行もついに終わりのときが見えてきた。

四日間に及ぶ乗馬トレッキング。計200キロの道のりを経て、オレたちは出発地点であったカラコルムに戻ってきた。ここから、モンゴル帝国時代の遺跡である「エルデニ・ゾー」という寺院に向かうことになっている。


いま一度思い出したい。今回の旅行の目的は「モンゴル帝国の遺跡を見て、タージ・マハルをはじめとしたムガール帝国の遺跡のルーツをつかむこと」であった(第一章をチェケラ)。
この四日間、堪え難きを堪え忍び難きを忍んできたのも、すべてはこのためである。

そして、その悲願達成のときはもうすぐ側まできている。
待ちに待った時が来たのだ!
今までの努力が無駄で無かったことの証の為に・・・
インド遺跡のルーツをつかむ為に!
カラコルム! 私は帰ってきた!!



さて乗馬トレッキングであるが、四日目にもなるとさすがにネタが尽きてきた。
いつまでも、自然がとっても美しいのとか、体が痛いいた〜いとか書き続けていても、いい加減読者も飽きるだろう。というか、いい加減オレが飽きてきた。
なので、この辺の話は端折る(「はしょる」ってこう書くんだ、へぇ〜)ことにします。




さて、この日オレが乗った馬はやたらとノリが悪かった。
ムチで引っぱたいても足で蹴っとばしても動いてくれない。そうこうしているうちにどんどん周りから置いていかれてしまった。
「あのー、すいません。馬を変えて欲しいんですけど」
あまりにひどいので先導する遊牧民のお兄さんに頼んで馬を変えてもらうことにした。


数分後、彼は一頭の馬を連れてきてくれた。
「気性の荒い馬だから気をつけろよ」
そういって連れてこられた馬は






 やんのかオラ。



うわー、ガラ悪そう。


案の定、乗り手であるオレのいうことを無視してどこまでも走り続けたかと思えば、いきなり立ち止まって草を食べ続けいつまでも動こうとしないなど、もうやりたい放題。
じゃじゃ馬の扱いが大変なのは人間でも馬でも同じ。もうオレ、何いいたいのか自分でもよく分かんないや。


それからこの日、遊牧民のお兄さんが乗ってた馬が突然暴れ出しました。
狂ったように暴走する馬に振り下ろされないよう、ロデオのような身のこなしで必死にしがみつきながら懸命に押さえつけるお兄さん。
なんとか押さえつけたお兄さんは少しバツの悪そうな顔をしていたが、もしオレの馬で同じようなことが起こっていたら...


死んでたな。






そんなこんなもありながら夕方前、スタート地点の草原に戻ってきた。
長かった乗馬旅行もここでお終いである。そして、お世話になった遊牧民の兄さんともここでお別れとなる。




「じゃあな日本人、いい旅をな」
「ありがとう、お兄さんも元気でね」
「そうだ日本人、写真を撮ってくれないか?」
「うんいいよ」

そう言ってオレは持っていたデジカメに手をかけた。
「いや違う、そっちの方だ」

彼はオレがもう一つ持っていた、インスタントカメラ(シャッターを押すとすぐに写真が出てくるカメラ)を指差した。
モンゴルの人は写真が好きである。しかし、ひとつ所に落ち着かない彼ら遊牧民たちに、写真などのおみやげを後で送るのは困難である。
だから、撮ったその場で手渡すことのできるインスタントカメラの方を、彼はより好んだのかもしれない。


オレは撮った写真を遊牧民のお兄さんに手渡した。彼はそれを胸にしまうと、馬を駆ってモンゴルの草原へ消えていった。


お疲れさん。そして、ありがとう。