星空で交わした二人の誓い




満天の星空に馬頭琴の音が響く。
モンゴル音楽に聞き惚れながら、オレは時計に目をやった。
「遅いなぁ」
だんだんそわそわして落ち着かなくなる。


今夜二人で。キャンプ最終日の夜、オレはビルグーンにそう告げた。
彼女はOKをしてくれたのだが、待ち合わせ時間になっても姿を見せない。
もしかして適当にあしらわれたのではないか? そんな不安が胸に宿る。


とその時彼女が現れた。見慣れた彼女の笑顔を確認して安心する。
「ごめんなさい。場所間違えました」
「すっぽかされたかと思ったよ。さ、行こう」



空には雲ひとつ存在せず、満天の星空が顔をのぞかせている。
この日になってようやく、モンゴルの星空を拝むことができた。
星座を形作る星々が空一面に埋めつくされており、その輝きは六等星の存在すらはっきりと確認できるほど、力強い。
見たこともない星空の美しさに心が魅入りそうになる。



「星がキレイだねぇ」
すぐ横にいるビルグーンに話しかける。
「こんなキレイな空を見るの、はじめてだ」
「でも、キレイなときはもっとキレイになるんですよ」
「もっとキレイになるのかい?」
「えぇ、キレイな空、モンゴルで見れます。ウランバートルでも見ることができます」
これよりももっとキレイな空があるというのか!?
ぜひお目にしてみたいものだが、残念ながら日数の関係上、それを確認することはないだろう。


オレたちはキャンプ場の外れにある川へ向かった。キャンプ場の灯りは届かなくなり馬頭琴の音色も聞こえなくなる。
ビルグーンは怖いのか、ペンライトで足元を照らしているオレの後ろに、ぴったりとついてくる。


川辺で並んで腰を下ろした。地面の冷たさが肌に伝わってくる。
「もう、旅行も終わりだねぇ」
星空の下、旅の出来事を思い出す。
「ビルグーン、ごめん。僕はこの旅行でいろいろわがまま言って、君を困らせた」
「いいえ。私もしゅんさんに対して、いろいろ失礼なことをしてしまいました。
 私、ガイドの仕事、今回がはじめてでした。でも、しゅんさんみたいなすてきな人が相手でよかったです」

「そんなことない。露天風呂では君の裸を覗こうとしたし、他にも勝手な行動とって君を困らせた。
僕は君が思ってるようなステキな人ではないよ」

「いいえ、しゅんさんはすてきな人です」
そう思ってくれるのは君だけだ。ビルグーン、ありがとう。


「ビルグーン、お願いがある」
「なんですか?」
「いつかビルグーンに日本に来てほしい。日本にはモンゴルにはない素晴らしいところがいっぱいある。それをビルグーンに伝えたい。
僕はモンゴルでビルグーンにお世話になった。今度は日本で、ビルグーンを楽しませたいんだ」

「いいですよ。私、日本が大好きです。いつか日本には行ってみたいです」
「じゃあ、約束しようか」
「約束?」
「うん、小指だして」
「こうですか?」
「『指きりげんまん』て知ってるかい? 日本では約束する時こう言うんだ。
 『ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます』て」

「ゆびきりー げんまんー うそー ついーたら はりせーんぼん のーますー?」
「うん、そんな感じ。一緒に言おう」


ビルグーンと小指を絡める。きれいで、柔らかな彼女の指。


「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます」

「ゆびきりー げんまんー うそー ついーたら はりせーんぼん のーますー。 ゆびきったー」


夜空の星は輝きを増し地上のオレたちを照らしていた。