アヤしい男、日本襲来




ウランバートル国際空港。旅行客と見送りの人でごったがえするこの場所で、オレは多くのモンゴル人たちに指をさされて笑われていた。


楽 しかったモンゴル旅行、その別離を惜しむかのように、オレはショップで買ったモンゴルの民族服を羽織っていた。旅行客の中にもモンゴルにかぶれたバカが最低 でも一人、オレみたいな行動をとるヤツがいるだろうと思っていたのだが、実際には民族服を着ていた者など旅行客はおろか、地元のモンゴル人にも一人もいなかった。つまりオレは、ウランバートル国際空港でいい見世物になっていたのである。あ〜、バカ丸出し。

ちなみに前回のラスト、空港でビルグーンと別れるシーン時点でもうこの格好でした。
あ〜、せっかくのムードがぶち壊し。



行きと同様、MIAT国際航空の飛行機で日本へ戻る。
隣にはモンゴル人の女性が座っていた。
彼女は日本語が読めないらしい。オレに入国カードを渡して「書いてくれ」とお願いしてきた。
「えーと、これは、ヤマルゾリルゴールイルスンベー?(入国目的は何ですか?)」
「ジョールチラル(観光です)」
「ヘドゥホノッフェ?(滞在期間はどのくらいですか?)」
「ゴルワンサル(三ヶ月です)」
モンゴルの民族衣装を着て、モンゴル語で会話をしているオレ。何だか、ますます自分が何人だか分からなくなってきた。



成田に到着して、リムジンバスで家路に着く。
バスの中から外の景色を眺める。建築物がときおり浮かぶのどかな田園風景。
人工の建築物が景観を損ねることなく、むしろ自然と融合するかのように存在する日本の風景は、モンゴルとは違った美しさがある。


それは外国では見られない、日本独特の、そして日本が世界に誇ることのできる光景である。外国から帰ってくるたびにそう思う。そう思うにつれ、不思議であるが、外国から帰ってくるたびに日本のことをいい国だなと実感する。あれだけ魅了されたモンゴルから帰ってきても。

いつかビルグーンにもこの景色を見せてあげたい。そして日本のよさを伝えたい。窓を眺めながら、今は遠く離れた彼女へ思いを馳せていた。



八日ぶりの地元の街はやはり懐かしかった。
出発前と何ひとつ変わらぬ光景。変わっているのはただ一つ、民族服を着たオレの服装だけである。
みんながオレを、好奇の視線で見ている。心なしか少し警戒されているような気もするが、まぁいいか。ちょっと写真を撮ってもらおう。


「写真撮る、一枚、オーケー?」
「すいません、私急いでるので」

何か怖がられている。外人と間違えられたか?
もう少し日本人っぽく話してみようか。
「すいませーん、写真撮ってくれませんか?」
あ、私、英語できないので


......




数分後、オレは街一番のアヤしい男として、周りから完全に避けられていた。
結局オレは、たまたま通りかかった外国人にお願いして写真を撮ってもらうこととなった。
日本人のはずなのに日本人よりも外国人に大事にされるオレ。
同じ国民のはずなのにオレという人間を冷たくあしらう日本人。
そんな日本人たちを見て、オレはやっぱり日本よりモンゴルのほうがいい国だったと思うのであった。
 


  日本に降りた、アヤしい男
  (撮影地:成田空港)