![]() 終わり、そして始まりへ |
| 「あーダメだ、終わらねぇー!」 夏休み最終日、オレは蒸し暑い部屋の中で悲鳴をあげていた。 夏休みを利用して行ったモンゴル旅行。そこで撮った写真は700枚を超えていた。 日本へ帰ってきたオレには、夏休みの宿題としてこれらの写真を整理する作業が残っていた。 これだけの写真整理とは膨大な作業量である。しかしオレは、夕方くらいに始めればなんとかなるかななどとタカをくくっていた。 が、甘かった。「いいものを、より美しく」と写真の加工に凝っていると、いつしか時計は夜中の三時をまわっており、しかもその時点で全体の半分も終了していなかったのである。 翌朝、半分徹夜明けのような状態で目が覚める。当然頭も働かない。 会社には「体調が悪い」とウソをつき、家で写真整理を続けることにした。 外ではセミの声が鳴りひびき、部屋の中ではマウスのクリック音がカタカタと聞こえる。 そんな中オレは、マウスの使いすぎで右腕が腱鞘炎になりながらも、機械のように作業を続けていた。 が、終わらない。それどころか終わる兆しすらまったく見えない。 やがてオレは、禁断症状に襲われカラダがぷるぷる震えてきた。 あーダメだー、気が狂うー! もうダメだ、少し休憩をすることにした。 部屋の片隅にあったゲームボーイに手を伸ばす。そしておもむろにスイッチをオンにした。 「さて、神龍でも倒しに行くか」 こうしてモンゴル旅行からわずか二日後、オレの生活は旅行前とまったく変わらぬ生活に戻っていた... それから数ヵ月後、オレはモンゴルの出来事を思い出していた。 「しゅんさんの夢は何ですか?」 ビルグーンの言葉が甦る。 「僕の夢は、そうだなビルグーン、色んな所を旅して、その思い出をみんなに伝えることかな?」 あの日の答えをもう一度、遠くの空へ語りかける。 モンゴルを旅したこと、思い出を、形にしてみんなに伝える。それはオレの一つの夢。 そして、できることなら形になった夢を彼女へ届けたい。それはオレの、もう一つの夢である。 そしてオレは旅行記を紡いだ。それはオレにとって、「夢」という名の目的地を目指した、もう一つの「旅」でもあった。 恋するモンゴル 〜モンゴル乗馬旅行記〜
完 |